フィリピンパブで働く女性の現実を研究する過程で、勢い余って対象の女性と家庭を構えることになったいきさつを描いた「フィリピンパブ嬢の社会学」(新潮社)が刊行され1カ月がたった。
著者の中島弘象さんは大学時代にスタディーツアーでフィリピンを訪れ、日本とは全く違う発展途上国の状況に興味持った。「舗装されていない道路、延々と続く交通渋滞、昼から寝転がり働かない男たち、全てが刺激的だった。貧しい中、明るく、情け深く、懸命に生きるフィリピン人たちを見ていたら、いつの間にかフィリピンが心の中にすみ着いていた」と振り返る。
同書では中島さんがフィリピンパブで働くために来日していた『タレント』と呼ばれるフィリピン女性たちの入国の経緯や生活にいかに興味を持ち、研究する中で知り合ったフィリピン人女性に引かれ交際を始め、彼女の職場のトラブルや交際に反対する家族を説得しゴールインする過程をコミカルに描く。
本を書くきっかけは、就職活動で失敗し自分探しに出掛けた船旅で出会った元新聞記者に体験を話したことから。「原稿は3年かけて準備した。もっと長編になるほど書いたのだが読みやすくするために大幅にカットしてまとめた。出版から1カ月、大手新聞社やテレビなどから取材の依頼を受け、思ってもみないいろいろな反響に驚いている」という。
結婚した「ミカさん」との関係はけんかもするが良好で、7月には子どもも生まれるという。目下の問題は仕事。中島さんは執筆に集中するために定職に就いておらず日雇いなどの仕事をしている。「生まれてくる子どもにもフィリピンとの関わりを失ってほしくないし、自分もこれからも関わっていきたい」とフィリピンとの関わりを中島さんは模索している。