渋滞対策のため、地方からマニラ首都圏に乗り入れている長距離バスは8月12日より南北交通の大動脈である「エドサ通り」の通行を禁止された。
マニラ首都圏の渋滞は非常に深刻で1キロメートル進むのに30分以上の時間がかかることもある。主要道は朝夕のラッシュアワーはもちろん日中も車であふれかえっており、接続する一般道も裏道を求めるタクシーなどで非常に混雑している。
ドテルテ新大統領は首都圏の渋滞解消を選挙公約の一つに掲げて当選しており、就任後乗り合いタクシーのエドサ通り進入禁止など矢継ぎ早に対策を発表している。
マニラ首都圏ではフィリピンのシンボルともなっている乗り合いバス「ジープニー」、タクシー、乗り合いタクシー「FX」、スマートフォン配車サービス「Uber」「Grab」、シティーバス、長距離バス、サイドカー付きオートバイ「トライシクル」などさまざまな交通手段があり、市民は目的に合わせて使い分けている。規制が緩く自由度が高い分、全てのサービスで利用客の獲得競争も激しく、利用客を獲得するために無理な割り込み運転、急停車、のろのろ運転など交通マナーは著しく低い。
マニラ首都圏の発展を支えているのは地方からの労働者。2、3時間の通勤時間は毎日長距離バスで通勤することも珍しくない。自宅とは別に格安のベッドスペースと呼ばれるシェアルームを借りて働く労働者の場合は、月曜日に自宅から長距離バスで出勤しウイークデーはベッドスペースに寝泊まりし、週末に長距離バスで帰宅する。長距離バスは出稼ぎ労働者にはなくてはならない交通手段であり、利便性が低下するしわ寄せは利用客が受ける。
毎週パンパンガ州から3時間かけて首都圏に「通勤」するというジョージさんは「首都圏の渋滞が深刻でそれを解決できるのは新大統領だけだと思うが、通勤時間が長くなることは間違いなく早く根本的な解決をしてもらいたい」と複雑な心境を語る。
「長距離バス会社はもうかる」と言われており、関係者の政権への働き掛けも強く「利権化」していた分野に、新政権はメスを入れるとともに「地下鉄構想」や「高速鉄道構想」などに取り組むとみられており、市民は渋滞解消とさらなる経済発展に期待している。