マニラ首都圏とセブで運用されている配車アプリ「Uber(ウーバー)」が8月15日より利用できなくなっている。フィリピン陸上交通許認可規制委員会(LTFRB)の指示によるもの。
アメリカのウーバーテクノロジーズ社が運営する配車アプリ「Uber」は登録しているドライバーが車の空き時間を利用して利用客を運送するマッチングアプリが建前だが、実際はアプリを介して予約を受け付ける個人営業のハイヤーマッチングサービス。利用客は乗車位置と目的地をアプリに入力しドライバーを探す。料金はタクシーの運賃に準じているが繁忙時間帯は特別料金として1.1倍から数倍の料金が課金される。
車両や運行に関するさまざまな規制や国が決めている「公共料金」で営業している従来のタクシー事業者は、いわゆる「白タク」としてUberの排除を求めている。
LTFRBも野放しになっている原状は問題として「Grab」「Uber」と協議し、営業許可などの取り決めが終わるまでの間、新たにドライバーを増やさない事で合意した。しかし、Uberはドライバーの募集を続けていることが発覚し、8月14日、LTFRBは1カ月の営業停止を決めた。違反したドライバーは12万ペソの罰金と3カ月間車両を没収するとされている。
フィリピンでUberの利用が急速に広がった原因は既存のタクシーへの不満がある。改造メーターでの高額請求や繁忙時間帯には近場以外乗車拒否し料金もドライバーの言い値となる。古い車両も多く、いまだにエアコンさえ効かない車もある。
Uberへの登録は新しい車が条件となっており、利用客はドライバーへの評価をアプリから見ることができ悪質なドライバーは排除される仕組みとなっている。氏名やナンバー乗車時の経路、料金などの履歴がアプリ上やメールでの報告書に残るため安心感もあるという。
マニラ最大級のタクシー会社「Ryoaki Taxi」を運営する濱田博昭さんは「Uberの問題は規制逃れどうこう以前の問題」と言い切る。「タクシー事業者は乗車中の利用客に対して全責任がある。Uberは配車アプリの提供者であって、運輸業ではないと公言している。責任を取ることができないドライバーを無責任に一般利用客に提供するのはどうなのか」と指摘する。
別の事業者は「フィリピンのタクシー料金は非常に安く抑えられている。タクシードライバーはタクシー事業者から車を借りて営業する個人事業のような形態をとっている。ドライバーは渋滞に巻き込まれ車が動かなければ1時間75ペソ(=187円)の料金しかもらえない。そこからタクシー会社に60ペソの車両代を支払い、ガソリン代を支払うと全くの赤字」だと言う。乗車拒否やぼったくりが頻発する構造の根は深い。
朝の通勤で急きょ路上で手を上げてタクシーを求めるはめになったランスさんは「すっかりマニラ市民に受け入れられた、既存のタクシーよりも品質の高いサービスを提供する配車アプリを無くさないでほしい」と訴える。一方、ミンダナオ島から出稼ぎにきたというタクシードライバーのフレッドさんは「配車アプリもタクシーも同じルールで競争できないのはおかしい」とタクシーと配車アプリ双方の規制のあり方に疑問を投げかける。