フィリピン全土で蚊が媒介するウイルスが原因の感染症「デング熱」が流行している。
感染後潜伏期間が約1週間で発症する場合が多く、発症すると特効薬はない。解熱や水分補給などの対処療法で治療するが死亡することもある。
死亡するのは出血性のデング熱の場合が多い。普通のデング熱と出血性のデング熱の区別がまだできていないため、血球検査で血小板値の急激な減少やデング熱の抗体検査で陽性反応が出た場合は入院することが望ましいと言われている。
マニラ首都圏や英語の語学留学で日本人の渡航が増えているセブ島などを中心に日本人患者への医療アシストを提供している「ジャパニーズヘルプデスク」代表の平拓成さんは「デング熱はフィリピンの雨期(6月頃から10月頃)に感染者が増え、数年前には日本人が死亡したこともある恐ろしい感染症、油断せず感染が疑われる場合はすぐに医療機関で受診すべき」と注意を呼び掛ける。
フィリピン旅行中での医療機関の受診で心配なのは言葉が通じないことや病院の利用方法や医師の診察予約などシステムが分からないこと。フィリピンの総合病院は日本のように医師が病院に所属して勤務しているシステムではなく、医師自身が診察部屋を病院からレンタルして個人経営する「オープンシステム」と呼ばれるシステム。患者としては診察してもらいたい医師を選んで受診できるなどのメリットもあるが、旅行者にとっては医師予約の取り方が分からないケースが多い。
「ズキズキ痛む、ジンジン痛む」など言葉の壁により、診察時に症状を医師へ伝えられないかもしれないという不安感から病院へ行かず、症状を悪化させてしまうこともある。
平さんは「まずは症状にあった専門医を選び診察予約をすること。そして正確に症状を医師へ伝えること。フィリピンの医師はアメリカの大学で勉強した人も多く、医療設備も整っているので安心して治療を受けることができるが、症状に合った専門医を選び正確に症状を医師へ伝えることができなければ適切な治療を受けることはできない」と日本人を含む外国人がフィリピンにて受診する際の問題を指摘する。
「ジャパニーズヘルプデスクはフィリピンの10医療機関に設置された日本人患者向けのサービスを展開している。専門ダイヤルに電話すれば日本語で対応してもらえ、スタッフが専門医の予約から診察時の通訳まで担当してくれる。旅行者が加入する海外旅行保険やクレジットカードに付帯する保険を活用してキャッシュレス受診の対応もしている」と平さん。
フィリピン保健省の発表では2016年1月~6月のデング熱の感染者数は5万7000人以上で昨年同時期より36%も多い。フィリピンの経済発展によりマニラ近郊のベッドタウン開発が進み工事現場などの溜水地が多いこともデング熱感染者増加の原因の一つと言われている。