マニラで若年層のエイズ感染が拡大し、政府がコンドームを使った対策に乗り出した。
フィリピンでのエイズ感染は1984年1月の初確認から2016年10月までで3万8114件となっている。2011年以降に確認された数が非常に多く約3万2000件に上る。現在は毎日約26件の新たな感染が報告されており、その約6割が15歳~24歳の若年層の感染となっている。
フィリピンでエイズが流行しているのはカトリック信者が多くコンドームによる人口コントロールに不寛容であること、性教育が不十分で性交渉による妊娠、感染症への危険が十分に認知されていないことが原因であると見られている。
フィリピン保健省は記者会見でエイズ対策のため10億ペソ(=約23億円)の予算が割り当てられ、5000万~1億個のコンドームを調達する予定であることを発表した。
エイズの感染報告が爆発的に増えた過去10年間で10代女性の妊娠が倍増しているというデータもあり、開放的な性の若年化とエイズ感染は関係があると指摘されている。
保健省は教会に向けて、「コンドームの使用促進は人口コントロールが目的ではなく、性感染症の啓発とエイズ対策が目的であり、2017年早々に学校でのコンドームの配布を実施したい」と説明している。
母系家庭が主流であるフィリピンでは子どもは宝として扱われる。フィリピン人にとって所属する家庭はかけがいのないものであり、女性は特に献身的に家庭に尽くす。子どもの父親が誰かということは日本ほど重要な問題ではなく、生まれてくる子どもたちは家庭の宝として全て大切に育てられる。そのような家族観や堕胎を認めない宗教的な理由により、10代同士の婚前交渉により妊娠してしまい、父親となるべき男性が責任放棄し逃亡してしまう出来事はありふれた話となっている。そうした背景とエイズ感染の拡大は無関係ではなく、対策には教育、宗教、家族観などさまざまな障害を越える必要がある。