マニラで農薬を使わないオーガニック野菜の人気が急上昇し、産地「バギオ」ではオーガニック農業体験ができる農場が人気を集めている。
中流層が急拡大するマニラでは「健康」が生活のキーワードとして広がりを見せている。フィリピン料理と言えば「油が多く使われ(オイリー)」「塩分の多い濃い味付け(ソルティー)」のおかずに大量のご飯を食べるスタイルが一般的。野菜摂取量は20年以上減少傾向で、物流や価格、調理の手間などに理由があると言われている。近年、外国人や富裕層のニーズを受けてサラダ専門店やヘルシー料理を提供する店が増えている。
差別化のため「無農薬」や「オーガニック」野菜の使用をうたう店も多くなってきている。フリーマーケットなどの産地直送販売店やスーパーマーケットでもオーガニック野菜は注目商品となっており、通常栽培の野菜よりもかなり高い価格が付けられている。
マニラで販売されるオーガニック野菜の多くが栽培されている「バギオ」のオーガニック農場「リリー・オブ・バレー」では10年前から日本人の技術支援の下オーガニック栽培を始め、年々農地を増やしているという。
同農場主のジェファーソン・ラルヴァンさんは「最初は半信半疑で始めたが、殺虫剤など農薬を使わずに栽培することは素晴らしいことだと思った。作物が全滅したりつらい経験もあったが、優秀な日本人の指導者から教わった『木酢液』の効果もあり現在は順調に無農薬で生育させることができている」と語る。
オーガニック農場の体験ホームステイも受け入れており、過去に1組の日本人カップルが宿泊、その時のことをジェファーソンさんはよく覚えているという。「オーガニックとは自然をコントロールするのではなく、自然を知り、自然を学ぶ栽培方法。自然に対して傲慢(ごうまん)になるのではなく、謙虚に自然の声に耳を澄ませともに生きるすべを考える。それは日本のスタイルではないのか? 今後は自分の学んだことを伝えたい。父から受け継いだ農場を息子、さらに次の世代につなぎたい」と夢を語る。